痛風の原因は血液中の尿酸が結晶化し、そこに激痛を伴う炎症反応が起こることです。つまり、痛風と高尿酸血症は背中合わせとなりますが、血液中の尿酸が増える原因はさまざまです。痛風の原因には何があるのか、正しく理解しておきましょう。
プリン体は細胞内の遺伝子であるDNAやRNAを構成する必要不可欠な物質であり、古い細胞が壊されるとプリン体が放出されます。また、細胞のエネルギー代謝の際にもプリン体が発生し、そこから尿酸がつくられます。
尿酸は無味・無臭・白色の針状結晶であり、いわゆる体内の老廃物といえます。この尿酸は体内で分解されることなく尿などに溶けた状態で体外に排泄されます。人間や猿のような霊長類以外の動物は尿酸を分解する酵素を持っているため、痛風になることはありません。
健常な人の体内では尿酸の産生と排泄のバランスがとれていますが、長年の暴飲暴食や肥満、ストレス、運動不足などによって産生と排泄のバランスが崩れてしまいます。
すると体内で尿酸が過剰となり、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化し、関節や臓器に沈着するようになります。尿酸結晶が沈着した関節で炎症反応が起きた状態がいわゆる「痛風」です。
尿酸結晶は血液の流れが滞りやすい足の関節にたまりやすく、痛風発作も足の関節で起こる事が大半です。また、過剰となった尿酸が腎臓に沈着して腎機能を低下させてしまう痛風腎が起こることもあります。
厚生労働省の調査によると、痛風患者はこの30年で3倍以上に増加しており、年々増加の一途をたどっています。痛風の患者数は100万人と推定されており、痛風予備軍は1000万人を超えるといわれています。
これだけ患者数の多い痛風ですが、患者の大多数は男性です。痛風が男性に多く発症する原因としては、女性に比べて男性の方が体内の尿酸量が多いことや、女性ホルモンには尿酸を体外に排泄する働きがあるためとされています。
痛風というと中高年の男性の起こるイメージがありますが、近年では若い世代で起こりやすく、年代別に見ると30〜40歳代で患者数が一番多くなるという調査結果もあります。
若い世代にも痛風の患者が増えている原因として、運動不足や不規則な生活、動物性脂肪の過剰摂取や食べ過ぎによる肥満、偏った食生活が考えられます。
体内で尿酸が異常に増えた状態を高尿酸血症といいますが、痛風はこの高尿酸血症と深い関わりがあります。尿酸とは白色、無味、無臭の結晶で、通常尿などとともに体外に排泄されます。
⇒プリン体とは?尿酸とは?
この尿酸はなかなか水や体液に溶けにくい物質で、プリン体の代謝異常で過剰に尿酸がつくられたり、腎臓からの排泄が低下した場合、尿酸は血液中だけでなく体全体にたまっていきます。
血液中の正常な尿酸値は7.0mg/dl以下とされています。これは血液中に尿酸が7.0mg/dlまでしか溶ける事ができず、これを超えると尿酸が結晶化してしまうからです。血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えた状態を高尿酸血症といいます。
高尿酸血症や痛風は、尿酸値が上昇する原因が大きく2つに分類されます。一つ目は、尿酸値の上昇のはっきりとした原因がわからない原発性(一次性)高尿酸血症・痛風で、全体の95%を占めています。偏った食生活や大量の飲酒、激しく汗をかく過度な運動、遺伝、ストレスなどが原因として考えられています。
二つ目は、尿酸値の上昇原因がはっきりしている続発性(二次性)高尿酸血症・痛風で、全体の5%程度を占めています。続発性(二次性)の原因としては、腎疾患や代謝性疾患などの病気や、薬剤の副作用があげられます。
100人中○○人は痛風予備軍!?
体内に存在する尿酸の8〜9割は体内でつくられ、残りの1〜2割は食べ物から摂取したプリン体からつくられます。体内には常に1200mgの尿酸が蓄えられており、これを「尿酸プール」と呼びます。
尿酸は体内で日々産生と排泄が繰り返されていますが、そのバランスが取れているために、体内の尿酸量は一定に保たれています。健康な人の場合、一日あたり700mgの尿酸が排泄されており、そのうち500mgが尿から、残り200mgが汗や便から排泄されています。
しかし、なんらかの理由で尿酸の排泄がうまくいかなくなる、もしくは尿酸の産生量が増える事によってバランスが崩れると、体内の尿酸量が増加して高尿酸血症となります。痛風の原因となる高尿酸血症には大きく分けて以下の3つのタイプがあります。
@ 尿酸産生過剰型
尿酸の排泄には問題がないものの、何らかの理由で尿酸の産生量が増加し、尿酸値が高くなるタイプです。原因としては過度の飲酒や肥満、ストレス、激しい運動、遺伝などが考えられます。
A 尿酸排泄低下型
尿酸の産生には問題がないものの、何らかの理由で尿酸の排泄量が低下し、尿酸値が高くなるタイプです。排泄量低下の原因の1つに腎機能の低下が挙げられ、日本人では6〜8割の患者がこのタイプとされています。
B 混合型
尿酸の産生量が増加し、かつ尿酸の排泄量も低下しているタイプで、3つのタイプの中では一番尿酸値が高くなりやすいといえます。日本人では2〜3割の患者がこのタイプとされています。
尿酸値が7.0mg/dlを超えた状態が続くと、血液中に溶けきれない尿酸は尿酸ナトリウムの結晶として析出し、関節やその周辺に沈着していきます。尿酸結晶は細長い針のような形状をしていますが、この結晶が直接痛みを引き起こすわけではありません。
この尿酸結晶が沈着した関節から剥がれ落ちることによって異物と判断され、白血球が集まってきて攻撃を始めます。
白血球は結晶を食べる(貪食)ことで攻撃しますが、その際に白血球から炎症物質のプロスタグランジンなどが放出され、それが腫れや激痛を伴う炎症を引き起こします。さらにこれらの放出された物質によって他の白血球も呼び寄せられるため、非常に激痛を伴う痛風が起こるようになります。
これが痛風の原因であり、痛風の代名詞ともいえる痛風発作となります。痛風の症状は関節ならどこにでも現れますが、特に多いのが足の親指付け根や足首、かかとなどです。
痛風発作の70%はここから起きる
初めての痛風発作の時に正しい治療をしなかったり、ほかの病気と誤診されたりすると、次の発作に襲われて苦しむ事になります。それでも治療を怠ると発作の間隔が狭くなっていき、発作が治る前に次の発作が起こるなど耐えがたい激痛に襲われる事になります。
そして数年後には発作の起きたところや耳たぶ、ひじなどに痛風独特の結節を作ったり、骨が破壊されて関節に変形が生じたりします。
尿酸結晶は腎臓の髄質部にもできるため、腎機能が低下し腎障害が起こります。また尿中の尿酸量が増えるため、尿の酸性が強いところに尿酸結晶ができ、尿路結石が起こります。痛風の背景には高尿酸血症があります。
そして高尿酸血症を起こす背景に偏った生活習慣があり、高血圧や肥満、高脂血症、糖尿病などを合併しやすく、動脈硬化から虚血性心疾患、脳血管障害などを起こす危険性も高くなります。痛風はこのように尿酸の代謝異常から発生し、多くの臓器を侵す全身病であることを知っておく必要があります。
痛風発作を放置すると恐ろしい事に