痛風の食事といえば以前はプリン体の摂取量が厳しく制限されていましたが、現在はプリン体の摂取制限は以前ほど厳しくありません。痛風で恐ろしいのは合併症であり、プリン体の摂り過ぎに気をつけるのはもちろんのことですが、糖尿病や高脂血症にならない食生活を心がけることが大切です。
痛風の食事と聞くと、プリン体の摂取量を意識した厳しい食事制限のイメージがありますが、それは昔の話です。体内に存在するプリン体の多くが体内でつくられている事がわかってからは、プリン体を含む食べ物の厳しい摂取制限は行われていません。
痛風は決して恐ろしい病気ではなく、痛風で死ぬことはありません。痛風で恐ろしいのは虚血性心疾患や脳血管障害などの合併症であり、それによって死に至る事も少なくありません。
痛風(高尿酸血症)が悪化することは合併症のリスクを高める事につながるため、生活習慣病の主原因となる食生活を改善することは非常に重要です。痛風を改善する食事のポイントとして、以下の8つが挙げられます。
プリン体の厳しい摂取制限は行わない
体内のプリン体のうち、食事から摂取するものは全体の2割程度のため、以前のような厳しい食事制限は行わなくなりました。代わりに多くの食材を偏りなく摂取し、栄養バランスに気をつけて、合併症を予防する必要があります。
プリン体の多い食品を継続的に摂取しない
食品に含まれるプリン体の影響が少ないといっても、プリン体を多く含む食品を大量に継続して摂取することは少なからず悪影響を及ぼします。どの食品にどれくらいのプリン体が含まれているのか知っておきましょう。
アルカリ性食品を摂って尿酸を排泄する
尿酸の7割は尿から排泄されますが、尿が酸性に傾くと尿酸が溶けにくくなるため、体外への排泄量が減少します。尿酸が溶けやすい尿にするには、アルカリ性食品を摂取して尿をアルカリ性に近づける必要があります。
自分の適正エネルギー量を理解する
痛風患者の多くが肥満傾向にあり、尿酸値の上昇に肥満が影響してることもわかっています。そのため、自分が1日に必要なエネルギー量を理解し、現在自分がどれだけのエネルギーを摂取しているのかを把握することが大切です。
水分を多く摂って尿酸を排泄する
尿酸の7割は尿から排泄されるため、尿量を増やせばそれだけ尿酸の排泄量も増える事になります。健常な人の1日当たりの尿量は1〜1.5Lですが、尿酸値の高い人は1日あたりの尿量が2Lになるよう、水分を多く摂取する必要があります。
栄養バランスと規則正しい食事が大原則
食品に含まれている栄養素は体内で複雑に関係しあっており、他の栄養素の吸収を助けたり、エネルギーの産生を促進したりしています。そのため、偏った食事によって摂取する栄養素にも偏りがあると、本来の役割を十分に果たすことができません。
お酒は飲み過ぎない
痛風といえば「ビール禁止」のイメージがありますが、以前の厳しいプリン体制限に比べれば多少緩和されています。お酒で問題になるのは、アルコールが持つ尿酸値を上げる働きです。アルコールにはプリン体の吸収を促進し、尿酸の排泄を抑制する働きがあるため注意が必要です。
薬物療法はきちんと継続する
薬物療法を始めると食事療法をやめてしまう人がいる一方、食事療法をすると薬物療法をやめてしまう人もいます。痛風の治療は薬物療法がメインですが、それはあくまで尿酸値のコントロールです。恐ろしい痛風の合併症を引き起こさないためにも、薬物療法と食事療法をきちんと継続しましょう。
痛風はかつて「贅沢病」とも呼ばれ、毎日ご馳走を食べていた王侯貴族に起こる病気でしたが、現在では誰にでも起こる病気になりました。その原因は生活が豊かになり、高脂肪・高タンパクの食生活が当たり前になったからです。
つまり食生活が痛風を引き起こす原因でもあり、食生活の改善が痛風を治療をする上でとても大切です。
昔の痛風治療は食事療法が基本でした。なぜなら、以前は食事から摂取するプリン体が痛風の元凶と考えられており、プリン体を多く含む食品は厳しく制限されていました。
しかし、体内のプリン体のうち、食事から摂取するものは2割程度に過ぎず、厳格にプリン体の摂取を控えたとしても尿酸値が大きく下がることがないことがわかりました。
そのため、現在の痛風の食事療法では以前のような厳しいプリン体の摂取制限は行われなくなりました。ただし、いくら体内のプリン体に占める食事由来のプリン体が2割程度といっても、プリン体を過剰に摂取すれば少なからず影響を与えますので、プリン体の多い食品を継続して摂取するのは避ける必要があります。
細胞には遺伝情報ともいえるDNAやRNAなどの核酸が、細胞中の核と呼ばれる部分に存在しています。この核酸はプリン体からできているため、細胞が分解されるとプリン体が放出されることになります。
これは私たち人間だけではなく動物の細胞にも言える事であり、細胞分裂が盛んな組織や細胞数が多い臓器には、その分だけプリン体が多く存在しています。代表的なものに、脳や肝臓、筋肉組織、造血組織のある骨髄などがあります。
特に肝臓は小さな細胞が密集しプリン体量も多いため、牛や豚、鶏などのレバーを摂取する場合にはプリン体量に注意が必要となります。
また、肉や魚のうま味成分であるイノシン酸もプリン体の一種であり、干物やかつお節のように水分を飛ばした食品はプリン体含有量が高い傾向にあります。一般的に100gあたり200mg以上のプリン体を含む食品が「プリン体が多い食品」とされています。
ただし、単純に「プリン体の多い食品がダメ」という訳ではありません。重要なのは食品中のプリン体含有量ではなく、どれだけ私たちが摂取するかということです。
例えばかつお節は100gあたり493mgと非常に高いプリン体含有量ですが、一回の食事でかつお節を100g食べるという事は考えられません。パラパラと豆腐やほうれん草にかけたかつお節が1gだとすると、プリン体の摂取量は5mg程度となります。
食品のプリン体含有量だけに囚われず、実際に自分がどれだけその食品を摂取し、その結果どれくらいのプリン体を摂取するのかを考慮することが大切です。
尿酸値を下げるには、体内の過剰な尿酸を体外に排泄する必要があります。尿酸の排泄ルートは複数ありますが、全体の7割を占めるのが尿からの排泄です。つまり、尿から効率よく尿酸を排泄させることが尿酸値を下げるポイントとなります。
尿は本来弱酸性ですが、痛風の人は尿が酸性に傾きがちです。尿酸は水に溶けにくい物質ですが、尿が酸性になるとさらに溶けにくくなり、結果として体外への排泄がうまくいかなくなります。
そのため、尿酸を効率よく尿から排泄するには、酸性の尿をアルカリ性に傾け、PHを6.2〜6.8くらいにコントロールする必要があります。
では、尿をアルカリ性に傾けるにはどうしたらよいのでしょうか?答えはアルカリ性食品を意識して摂取することです。食品は大きく分けて、アルカリ性食品と酸性食品があります。アルカリ性食品の代表的なものに海藻やきのこ、野菜などがあり、酸性食品の代表的なものに肉類や魚類があります。
痛風になりやすい人は肉や魚介類を好む食生活をしており、これが尿を酸性にし、尿酸排泄量を低下させる原因となっています。尿酸値が高い人は食事内容を見直し、アルカリ性食品を積極的に摂取して尿を弱酸性に近づけるようにしましょう
高血圧や糖尿病、高脂血症などは生活習慣病であり、長い間の高脂肪・高タンパク・高カロリーの食事が引き起こしたといっても過言ではありません。
痛風の場合も例外ではなく、高尿酸血症と診断されたり痛風発作が起きたという事は、自分のこれまでの食生活に警告がなされたということです。痛風患者には肥満が多く、尿酸値の上昇に肥満が深く関わっていることもわかっています。
食事内容やカロリー摂取量がどのようなメカニズムで高尿酸血症を引き起こすか、まだすべてが解明されたわけではありませんが、少なくとも長年の暴飲暴食が痛風を悪化させ、食生活を改善すれば痛風の症状が改善される事は明らかになっています。
そして、痛風で恐ろしいのは痛風発作ではなく、合併症となる高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病です。痛風で死に至る事はありませんが、これらの生活習慣病は痛風の合併症として進行すると生命に危険を及ぼすことがあるため、合併症を起こさない食生活を心掛ける事が大切です。
そのためには、自分が一日に必要なエネルギー量がどれくらいなのかを知り、自分が現在どのくらいのエネルギーを摂取しているのかを把握することがとても大切です。
重篤な合併症を併発させないためにも、尿酸値をコントロールして痛風治療をするとともに、肥満や高脂血症、糖尿病、高血圧などの治療も併せて行うようにしましょう。
体内の水分が不足すると、血液中の尿酸濃度が高くなって尿酸が結晶化しやすくなります。尿酸が結晶化するということは痛風発作や尿路結石などを引き起こしやすくなるため、尿酸値の高い人は意識して水分を多く摂る必要があります。
また、体内で過剰となった尿酸のうち7割が尿から体外に排泄されるため、水分を多く摂って尿量を増やすことは尿酸の排泄を促進し、尿酸値を下げる事にもつながります。
健常な人の1日当たりの尿量は1〜1.5Lですが、尿酸値の高い人は1日あたりの尿量を2Lにする必要があります。これは1日に摂取する水分量を800mL程度(コップ4杯程度)増やすことを意味しています。
ただし、偏った時間にまとめて水分を摂っても意味がありません。一日を通して体内の水分量を不足させないためにも、バランスよく摂取することが大切です。水やお茶ばかりでなく、食事の際に汁物を追加してみるなど、摂り方を工夫してみると水分の摂取がしやすくなります。
肥満になるだけで尿酸値が上がってしまうほか、糖尿病や高脂血症など合併症のリスクも高まってしまいます。しかし、肥満を改善するためだからと言って、ただ摂取エネルギー量を減らせばよいかというとそうではありません。
私たちの体は食事からエネルギーとなる糖分を吸収するため、食後は血糖値が上昇します。すると、膵臓からインスリンと呼ばれるホルモンが分泌され、糖分を細胞に取り込ませて血糖値を抑える働きをします。
血糖値は食事の時間が空くほど、食べ物を摂取した時に急上昇しやすくなり、インスリンも大量に分泌されるようになります。その結果、摂取したエネルギーは体に取り込まれやすくなる、つまり肥満になりやすくなります。
摂取エネルギーを抑えるために食事量を減らすことは大切ですが、「昨日食べ過ぎたから朝食と昼食を抜こう」「昼ご飯を食べてないから夜はたくさん食べよう」などという不規則な食生活をしていると、どんどん体が肥満に近づき、血糖値のコントロールも難しい体になっていきます。食事は可能な限り、決まった回数、決まった時間に摂るようにしましょう。
痛風と言えば「ビールは禁止」のイメージが世間で定着しています。以前の食事療法ではプリン体の摂取量が厳しく制限されていたため、プリン体を多く含むビールを飲むことはもってのほかでした。
プリン体カットのアルコール飲料も多く販売されていますが、食事由来のプリン体があまり影響がないことがわかってからは、ビールの摂取は多少緩和されています。
痛風になった場合、ビールに限らずお酒は控える必要があります。お酒の中でもビールは飛び抜けてプリン体含有量が多く、カロリーも高い傾向にあります。痛風になったらビールは一切禁止という訳ではありませんが、ビールはプリン体もカロリーも高いということを認識し、量を控える配慮が必要です。
また、お酒に含まれるプリン体以上に問題となるのが、アルコールの働きです。アルコールは体内で分解される際に尿酸が作られるほか、尿酸の原料となるプリン体の腸管吸収を促進したり、腎臓からの尿酸排泄を抑える働きがあります。
ある調査では、痛風になった人の9割以上が週5日以上アルコールを摂取しており、アルコールの摂取量が多いほど痛風発症の危険度が上がる事がわかっています。
痛風になってしまった場合は禁酒が理想ですが、仕事上の付き合いでやむを得ず飲まなければならない場合や、ストレス発散効果、リラックス効果もある事から、適量を心掛けて飲むことが大切です。
現在は尿酸の排泄を促進したり、尿酸の産生を抑制する薬が開発されたため、痛風治療は薬物療法が基本になっています。しかし、薬物療法を行っているからといって、食事療法をしなくてもよいわけではありません。
逆に、食事療法を行っているからといって薬物療法をやめてもよいわけでもありません。
痛風発作の激痛が起こっている時は、誰しも「この痛みを鎮めるならどんな事でもするぞ」と思いますが、痛みが治まればその気持ちも薄らいでいきます。薬物治療を始めると尿酸値は基準値内に治まるため、痛風発作は起こらなくなります。
このことで「痛風が治った」と勘違いし、薬の服用を勝手にやめてしまう人がいますが、それでは元通りになってしまいます。痛風発作が起こらないのは薬物療法と食事療法を続けているからだと自覚し、継続することが大切です。
現在行われている痛風の食事療法は、プリン体の過剰な摂取を控えることはもちろんのこと、尿酸をいかに体外に排出するか、合併症として起きやすい生活習慣病をいかに抑えるかが重要視されています。